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2014年2月28日金曜日

Dead Wood -新進Dani Amoreのハードボイルド小説-

『Dead Wood』は、アメリカ L.A.在住の新進の女性作家、Dani Amoreによる2011年のハードボイルド小説です。

舞台はミシガン州グロスポイント。主人公は、過去、ある事件により警察を辞めざるを得なくなり、その後は同地で私立探偵を営んでいるJohn Rockne。

高級住宅街であるこの地区で、若い女性ギター職人が自宅兼工房で殺害されるという事件が起こり、その父親が事件の捜査をJohnに依頼してくる。警察では強盗による犯行と見ているが、父親は彼女と交際のあった湖底に沈んだ樹を引き上げる業者の男を疑っている。彼女はその材木を使い、ある女性スターカントリーシンガーのために特注のギターを製作していた。あまり気乗りしないまま、John Rockneはその依頼を引き受け、捜査を始めるのだが…。

タイトルのDead Woodは、自然に倒壊し、湖底に沈んでいる、なかなか伐採の叶わないような貴重で美しい樹のこと。その樹から作られた美しいギターと、奏でられるメロディーがストーリーの中心となっていきます。
主人公のJohn Rockneは、その経歴から暗い過去を持つような人物に見えますが、実はその逆で、ラテン系の美貌の妻と二人の娘を愛する平凡で家庭的な男性です。脇を固めるのは、厳しい警察署長でもある姉や、いかにも健康に悪そうな大食漢の地方紙の記者の友人など、個性的な人物。土地柄、割と穏やかな依頼の仕事ばかりで、こんな仕事は自分向きではないと思いながら、危地に臨んでいくJohn Rockne。その度にまず、奥さんに怒られる、姉ちゃんに叱られる、という心配をするJohnの人物像にはとても好感が持てます。200ページほどの中に、見せ場になるアクションシーンもふんだんに盛り込まれ、テンポもよく最後までとても楽しく読めた小説でした。
少し自分の感じた欠点を指摘させてもらうと、ミステリの解決というところで、発端となる事件と、そこから派生した事件という流れが少しメリハリのない感じになってしまっているところでしょうか。あと、もう一人の登場人物に関するミステリの扱いには不満を持つ人もいるかもしれません。
全体としては、とても楽しく読めた良作だったな、というのが私の感想です。また、割と読みやすかったので、これから洋書のミステリーを読んでみようか、という人にもおススメです。

Dani Amoreは、2011年AmazonのINDEPENDENT BOOK AWARD FOR CRIME FICTIONを受賞し、移行Kindleを中心に注目度が高まっている作家です。Kindleを始めとするe-Book出身の作家のひとりということになると思います。『Dead Wood』は彼女の2作目の小説で、それ以前にL.A.の女性私立探偵Mary Cooperの第1作『DEATH BY SARCASM』を、同2011年にKindleで出版しています。Mary Cooperシリーズは彼女の現在のメインワークとなっているようで、昨年までに3作目までが出版されています。Kindleでは、3作がセットの版も出ていて、そちらがお買い得です。Circuit Riderシリーズというウエスタンも2作出ていて、その他にも短編のシリーズや、ノン・シリーズのサスペンスなど、20作近い作品を発表しています。デビューからの期間を考えると、かなり早いペースですが、印刷・製本などの手順のいらないe-Bookならではのフットワークということでしょうか。現在では彼女の作品のいくつかはプリント版も出版されています。ちなみに探偵John Rockneの登場する作品はこの1作のみですが、John Rockne Misteryと銘打たれているところから、Dani Amoreも続編を書くつもりはあるようで、John Rockne氏に再会できる機会もあるかと期待しています。
女性作家のミステリは、やはり女性向けという場合が多かったりしますが、Dani Amoreは男女を問わず幅広い読者が楽しめる実力を持った作家だと思います。今後の活躍にも期待して、注目していこうと思います。

Dani Amore Official Site 

●Dani Amoreの著作


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