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2014年10月13日月曜日

Valiant その2 -Bloodshot-

前回6月のその1に続き、Valiant その2は『Bloodshot』です。実は前回の6月から今に至るまででも大して読めてなくて、いまだになんで『and H.A.R.D. Corps』になって、今月号からまたひとりになったのかも知らないのですが、スタート時のライターDuane Swierczynskiについても書きたかったりするので、とりあえずさわりの辺りのストーリーや設定ぐらいの感じで書いてみることにしました。とは言っても、半分は少しうまく時間が作れなかったのと、もう半分はいつものもったいない病で読むのが遅れているだけで自分の熱意は変わってはいないので、なるべく熱く書いてみよう。

Rayは妻子にしばしの別れを告げて基地から任務のために飛び立つ。アフガニスタンで捕虜になっている戦友を救うためだ。この任務には彼の特殊能力が必要なのだ。妻にはこれが終わればもう基地任務から離れることはないと約束する。息子の学校行事までには戻ってやりたい…。

敵の基地上空。Rayは単独でパラシュートで降下する。だが、狙いすましたかの様に撃ち込まれたミサイルにより空中で彼は撃墜される。

敵の基地に黒焦げの死体となって運び込まれるRay。放置されたその遺体の中に埋め込まれた通信機が呼びかける。「目を覚ませ、任務はこれからだ。」すると、胸の赤い円を中心に彼の身体はみるみる再生し始める。

体内のナノマシンの働きにより、完全に肉体を破壊された死からも再生し、蘇生する。それが彼の特殊能力だった。

通信機の指示に従い彼は基地の中を進み、次々と敵を殲滅して行く。そして、目的の扉を開けた時、彼の目の前に現れたのは息子のJohnだった。その姿に気を取られているうちに彼は頭部を撃ち抜かれ、再び絶命する…。

再び蘇生し目覚めると、彼は椅子に拘束され頭部、首筋に何本ものケーブルを接続されていた。「ダウンロード85%進行中。」そして、目の前に白衣の老人が立ち、彼にBloodshotと話しかける。

その男、Kuretichについての記憶はない。彼が話すプロジェクト・ライジング・スピリットの事も。そして、その男は彼を通じて、それまで彼に指示を送っていた男にも話しかけ始める。「ダウンロード完了。」 その声とともにKuretichがスイッチを入れると、彼の頭の中にいくつもの映像が浮かび上がる。妻と子供。そしてまた別の。いくつもの彼が現実だと思っていた彼の愛する家族、そして戦友…。

「それらの妻たち、子供たちはすべてプロジェクト・ライジング・スピリットが作り上げた偽りのものだ。君が愛するものを守るため任務に赴き、人を殺すためのモチベーションを維持するために。私は知っているよ。半分は私自身が作ったものだからな。」

「嘘だ!」

彼は拘束、ケーブルを引きちぎり、椅子から逃れる。「行かせろ!ここでの目的は済んだ!」Kuretichがゲリラたちを制止する。

基地の外に逃れると、再び通信が回復する。「心配するな。位置は分かっている。ただちに回収チームを送った。」彼の前にヘリが降下し、数名の銃を構えた兵士が降り立つ。「ターゲット確認!」

ターゲット…?

銃が一斉に火を噴き、彼の身体はズタズタに引き裂かれる…。


極端なほどソリッドで無駄を削ぎ落とした展開ながら十二分にキャラクターに感情移入させるストーリーに、もちろんそれを表現する力量のある画。この第1話で私はこの作品に完全に心を奪われてしまったのでした。それにしても第1話で主人公が本当に無残な感じに3回も殺されるとは。
そして、物語は自分が何者か知ってしまったBloodshotが、彼を取り戻し再び人間兵器として使用しようと謀るプロジェクト・ライジング・スピリットの追手と闘い、逆襲し、自らの正体を求めて敵の本拠に乗り込む、という展開になって行きます。明らかに普通の人間とは違う灰色の肌に赤く光る双眼、どんな破壊からも再生する不死身の肉体を持ち、そして偽りの記憶しか持たない男、Bloodshotの戦いが始まる!

第1話にとどまらず、その後のストーリーも早いスピードとテンポで次から次へと展開して行きます。少し疑問のあるようなキャラクターの行動も勢いに押し流されてしまう感じ。また、その1で登場した『Harbinger』の主人公Pete Stancheckが逃亡してきた施設も実はプロジェクト・ライジング・スピリットのものであり、その辺のつながりから新生Valiant最初のイベントコミック『Harbinger Wars』へつながっていくものと思われます。

ライターは犯罪小説家でもあるDuane Swierczynski。このような作者のオリジナルでない作品ではどのくらいまでがライターの力に依るものか見極めにくかったりもするのですが、この『Bloodshot』ではその力強い物語の多くがSwierczynskiの力量に依るものでものであることは明らかです。ちょっと難しいキャラクターであるBloodshotについても実に魅力的に書かれているなあ、と感心します。Duane Swierczynskiについては、次回に彼の小説である傑作『Wheelman』の感想とともにかなり熱苦しく語るつもりですのでご期待ください。
序盤のペンシラーはManuel Garcia。マーベルなどで活躍するアーティストです。正確で迫力のあるアクションシーンに優れた描き手です。一方で普通の会話シーンなどではやはり正確で綺麗に描かれた画ながら、若干キャラクターの動きが重めな印象を受けますが、これはアクションシーンとのメリハリを付けるための陰影の差に加えて、インカーStefano Gaudianoのさじ加減によるところも大きいのかな、と思ったりもします。また、余談にはなりますが、最近少しカラーリストという仕事を軽く見過ぎていたかな、と思い始めています。少し前までは、作品が作られる際、ペンシラーを中心としたチームの中で、指示された色を組み合わせを調整しながら乗せて行くというものだったろうと思うのですが、近年のアメコミでは更に複雑な個人的な技能プラスセンスが必要になり、作品の中でも果たす役割が大きくなっているのではないかなと思い始めています。思い始めたばかりなのでまだ全然わかりませんが、気にしていれば少し形が見えてくるかなと思い、この作品のカラーリスト、Ian Hanninの名前も一応記しておきます。

旧版(1993-1996)では、正体不明の少年によってプロジェクト・ライジング・スピリットの研究所から解放された以前の記憶のないBloodshotが、自らの正体を探索しているところから始まります。ニュージャージーのギャング組織に手がかりがあるとの情報を得て、同地に向かい、プロジェクト・ライジング・スピリットの追手とも闘い、という現行新生Valiant版とは全く違う展開になっています。こちらはこちらで読んでもう少し詳しい形で書くこともあるかもしれません。旧版も出版当時人気で色々な国で翻訳が出たということで、もしやと思い調べてみたのですが、日本版は出ていないようです。他にもAcclaim Comics版(1997-1998)もあったりするので、早く読んでいきたいなあと思っています。


というわけでValiant その2 Bloodshotでした。少し間が空いてしまったなと思うのですが、その間にもあんまりコミックの事は書けていないし、一方では小説の方も読み終わった長編が3冊も待機中だったり、なんとかもっと努力せねばと思うばかりです。コミックに関しては、あっちが気になって読んでいるとこっちが止まっていたり、疲れたしあんまり時間もないからそんなに思い入れも無くてブログに書くかどうかわからないマイケル・ターナーの『Witchblade』でも読んどこう、などという日々でモタモタしているのですが、Valiant物と2000ADぐらいはもう少しきっちり読んでいこうと思います。 
 Valiant その3は順番から行くと『Archer & Armstrong』と『Eternal Warrior』ということになるのですが、この流れで『Harbinger Wars』の方が先になるかもしれません。いずれにしてもなるべく近日中に。そして次回は文中にも書いた通り、この作品のライターDuane Swierczynskiによる犯罪小説『Wheelman』についてです!次回に書くからと思って今回はSwierczynskiの凄さが控えめになりすぎたのではないかと思います。ご期待ください。


リストの旧版については、最近再版か新編集されたVol.1のみを記載しました。後は絶版状態で入手困難のようですが、続いてそのうちに再版されてくるものと思います     


●関連記事 

Valiant その1 -X-O ManowarとHarbinger-

●Bloodshot(2012-)



●Bloodshot(1993-1996)


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