2015年9月13日日曜日

Hogdoggin' -Billy Lafitteシリーズ第2作!!!-

まずお詫びです。少し前の事ですが、7月にケン・ブルーウン/ジャック・テイラー・シリーズ4作『The Dramatist』について書いたのですが、ちょっとあれは暴言が過ぎました。やっぱり読んでいる人がどんな気分で読んでるのかわからないのだから、あまり乱暴な書き方をすべきではないな、と反省しております。とは言ってもやはり自分には自分なりの意見があり、それが勢い余って乱暴な発言になってしまうところがあり、それを書かずに無難なことだけでまとめるというのも正しくはないなと思います。なんとかうまく書く方法を模索中でありますが、その一つとして、折りしもブログ開始約1年半ということで夏休みを利用し、「ブログ1.5周年の反省」というのを書いてその中で自分のハードボイルド小説などに関するスタンスを一つ明らかにしてみようと思い立ちました。えー、ところが、「私はロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの特に初期の『失投』、『約束の地』、『初秋』あたりがあまり好きではありません。」と始め、リー・チャイルド辺りまでを恣意的にその流れで語ろうとする輩への罵倒、ミステリの範疇に限らず広くエンターテインメント作品を読み見識があると思っているが実は狭量で大勢の意見には順ずる「ミステリファン」への罵倒、と続き、一歩下がって冷静になってみるとあまり人に見せられるものではないな、と思いいくらか修正も試みてはみたものの、やはりこの場に出すことは断念した次第です…。好きな本についてなるべく客観的にも語ろうとすると、この本てこんな言われ方するのだろうな、とかこんなぶった切り方されるのだろうな、と見えてきて先回りして攻撃的になる、とかいうのは自分に都合のいい解釈でしょうか?単に私が人として未熟だからかもしれません。
と、なぜこんなにくどくどと前置きの言い訳をしているかというと、今回もかなり暴言が飛び出す可能性大だったりするからです。Anthony Neil SmithのBilly Lafitteシリーズ第2作『Hogdoggin'』!!!!前作『Yellow Medicine』は私が昨年読んだ本の中でも第1位の作品!!(ただし、ランキングとかつけるの嫌いなので何が2位とか言わない。ブルーウンもスゥイアジンスキー『Wheelman』も1位)そして今作も本年第1位必至の大傑作!!ということでなるべく温和にやるように心がけますので、寛容な方だけでもお付き合いください…。


前作『Yellow Medicine』のラスト、Billyは全てを破壊された怒りをRome捜査官にぶつけ、銃を突きつける。だが、引き金を引くことはできなかった。そしてBilly Lafitteは姿を消す…。

18か月後、BillyはSteel Godをリーダーとするバイク・ギャングの一員となり放浪を続けていた。Steel Godは絶え間ない闘争に嫌気がさし、ある種宗教的でもある理想郷の建設を目指しながらも、一方では反対者、敵には容赦ない制裁を加え、殺人も厭わない暴力の権化のようなリーダーである。ステロイドを使い見た目もバイカーの一員となり、Steel Godの参謀を務めるBillyだったが、どこか常に空虚なものを抱えた異質な存在だった。

一方、FBI捜査官Romeは事件の後、捜査方法の行き過ぎなどからその後のBillyへの追及は禁じられていた。だが、個人的な報復をも含む彼のBillyに対する執念は収まることはなかった。一方で妻との問題を抱えるRomeは、Billyを捕まえることでそれらの全ての問題も解決するように執念を燃やす。若手捜査官McKeownを配下に引き込み、かつてBillyが相棒とともに地元のギャングを殺害したと疑われる事件を洗い直し、Billyの元妻、Ginnyにも接近し始める…。

深夜、Billyが最後にYellow Medicineから姿を消す際、保安官から手渡されたそれまで一度も鳴ることの無かった携帯が彼を呼ぶ。そして、Steel Godから譲り受けたバイクにまたがったBilly LafitteがYellow Medicineに帰還したとき、再び地獄の蓋が開き沸騰し溢れ出した暴力の嵐が吹き荒れる!


タイトルの『Hogdoggin'』は豚(Hog)の群れに闘犬をけしかける競技のようなもので、Romeが家にいるときTVで放送されているシーンがあります。本当にあるのかはよくわかりませんが。また、Billyらバイク・ギャングが乗る大型のハーレイもHogと呼ばれているので、そちらにもかかっているのでしょう。前作『Yellow Medicine』では軋みをあげながら吐き捨てられ続けるBilly Lafitteの一人称が印象的でしたが、第2作であるこの『Hogdoggin'』では3人称に変わり、様々な人物に焦点が当てられない面が描かれる群像劇になっています。Rome捜査官を始めとする様々な人物がそれぞれの妄執、怒りなどでBillyを追跡し、追いつめる。果たしてBillyは追いつめられる豚なのか?それとも豚の群れに放たれた犬なのか?

さて、今回はこの作品をより理解していただくために架空の映画版キャストを作ってみました。というか勝手にできてしまったのでここで発表してみます。70年代後半~80年代初頭の東映セントラル制作の『Hogdoggin'』です!

Billy Lafitte 松田優作
Franklin Rome捜査官 石橋蓮司
Steel God 原田芳雄
Kristal 竹田かほり
Desiree(Romeの妻) 多岐川由美
Ginny(Billyの元妻) 風吹ジュン
McKeown捜査官 岩城滉一
Nate 山西道広
Colleen キャシー中島
Fawn 亜湖
Perry 阿藤快(海)
Alex ジョー山中
Wyatt警部補 志賀勝
Tordsen保安官 荒木一郎(特別出演)

Kristal=竹田かほり以外の女優キャスティングにはいまいち自信はないが…。多くのキャラクターについてはあらすじでも書いてありませんが、読めばわかる!これを見て興味を持った人はぜひ読んでみてください。

この作品、そして前作『Yellow Medicine』は暴力について書かれた小説です。ちょっとここでなぜ暴力について書かれた小説を読むのか、ということについて考えてみます。単純に、まず暴力がテーマの小説、あるいは映画などがあり、そしてそれを好んで読む、観る人がいるという状況があり、「暴力」というものはいかなる形においても正しいものではないのだから、それを好んで観る人も正しくないというのが多くの単純化された意見なのでしょう。
で、そういう人のひとりである自分について考えてみます。まず自分は昨日今日この世に現れて様々な種類の作品がある世界に触れて、その中で自分に合ったものとしてその傾向の作品を選んだわけではありません。自分にも当然そういうものを読むようになった長い読書遍歴があるわけです。まず、私も子供の頃、図書館にあるような子供向けのミステリを読み、そこからミステリのファンになりました。そして、成長し自分の周りの世界が明確に善と悪に分けられない曖昧なものであることを知るにつれ、読むミステリもそういう世界が描かれたハードボイルド方向のものに移行していったわけです。ただここで言っておきたいのは何も私が現実を見る目が優れていたからそういう方向に動いたのだ、などということではありません。周りの世界の曖昧さが見えるからこそ明確に理知的に事件が解決されるものを求める人だっているでしょう。私がそういう方向に動いたのは、単に私の性格などの結果だろうと思います。
まあ、ここにきて私の文章を読んでくれる人は大抵はこのジャンルのファンだろうからお分かりでしょうが、このジャンルを読まない人は、ハードボイルドというのは探偵が腕っぷしで事件を解決するものとか思っていたりもするのでしょうが、そういうものではありませんよね。自分の周りやTVでみるような事件というのは実際には単純で動機も理由も方法もすぐわかるけど、いくら頭が良くても解決出来ないもので、そこで曖昧だとわかっていても自分の考えるモラルの中で最良と思われる解決を目指すのが優れたハードボイルド小説です。だからと言っていわゆる「本格」ハードボイルドみたいなものだけが優れていると思っているのではなく、マイク・ハマーのように暴力だらけの世界で暴力によって意志を示す(正義とかじゃない!意志!)ものも大変優れていると思っています。ただダーティーな世界にいるけど自分のモラルを持ち、仁義に篤いような都合のいい助っ人がモラルの境界のエクスキューズのようにいて、正論ばかりをゴリ押しするようなマッチョ説教は嫌いなんだよ。ジャック・テイラーのようなだらしないオッサンに誰が事件を頼むのか、なんていう人がいるけど、それなら自分の正論ですぐに依頼人を見下すような傲慢な探偵に誰が仕事を依頼するのか、って話。
と、話がそれてしまいましたが、そこで暴力の話です。そういった事件の多くは現実の世界でも暴力という形で現れます。そして世界には大きい物から小さなものまで多くの暴力が存在します。世の中には暴力から目を背けていればそういうものが無くなると思っている人もいるのかもしれませんが、私はどうしてもそういうことができない人間です。だからと言って私は決して暴力について肯定的な人間ではありません。それは単に被害者なることを怖れてということだけではなく、加害者になってしまう可能性もあるということを含めて。だから私は暴力について嘘の書かれた話が嫌いです。実際にはそのポジションに至る過程で汚い暴力が使われたことは明らかなのにきれいごとばかりを語る者。実際には暴力を背景とした威圧であるのに曖昧な「パワーゲーム」の結果として書かれた勝利や解決。任侠道に篤く堅気には決して手を出さない親分が市中のもめ事を収めるとか。暴力では何も解決しないとか言うのは正しく見えるし簡単だけど、実際には大抵の解決は暴力(武力とかいう言い換え)でもたらされ、近年の歴史を見ても「話し合いでは何も解決しない」というのが正しいように見えてしまう。ただ安易にそっちが正論だと思い込むような勢力には決して同調する気はないけど。
こういう考えをしてしまう人間だから私は暴力について書かれたり、描かれたりしたものを見るとむしろ安心するのでしょう。そこには綺麗ごとの裏に押し込められた暗黒や悲惨は無いのですから。この作品を含め、そういう作品の中で暴力というものは陰惨で醜く不快なものとして描かれます。そういう不快感からこういう作品を「暴力しかない」と否定する人もいます。でもそういう作品を書く人は暴力というのをそういった陰惨で醜く不快なものだと思うからそう書いているのですよね。そう思わない人の書いた作品の中ではキャラクターがクールに自分の力を示し、歌舞伎町の帝王やなんかの覇権を目指していたり、デザイナースーツの細腕でギャングスタスタイルで銃を構える頓珍漢だったりして、私もそんなものは読みません。
多くの犯罪・事件は暴力という形をとります。だったら暴力そのものについて書かれていることにも意味があるはずです。それともそんなものはただの手段や結果でもっと重要なのはトリックやプロットや背景となる国家的陰謀や人情ドラマとでも言うのでしょうか?
ただ、人にはそれぞれ好き嫌いがあって過剰な暴力が描かれているものはどうしても駄目だ、という人だっていると思います。私だってそういう人に無理にそういう本を勧めようとは全く思いません。ただし、そういう人は逆に言えばそういう本が嫌いなのだから根本的に読めていないわけなのでそれについて語る資格はないのではないでしょうか。たとえミステリを1万冊読んでいたってすべての本について語れると思うのも、また嫌いだからと言って暴力について書かれた本を見下して適当に語れると思うのもあまりにも傲慢ではないでしょうか。私も読んだ本全てについて語るわけではないし、何年かに一度ぐらいはうっかり自分に合って無いものを手に取ってしまうこともあります。そういう時は、まあ30ページぐらい読んで気が付いてあとは15分ぐらいでななめ読み(いわゆる速読とかいう下品な読み方)をして手近なゴミ箱に叩き込んでそんな本は読まなかったことにするだけです。わざわざそんな本の感想を書くようなことはしないし、どこかでそれについての批判ばかり書かれてるところを見つけても同調してこき下ろしに行ったりしません。大体そもそもが欠点だと思うところをあげつらってこき下ろすなんて言うのは実に簡単なことです。ちょっと上で私がスペンサー・シリーズにやってみたようにね。「暴力しかない」。で?そんなの評価にも感想の域にも達してないし、ちっとも見識があるようにも頭よさそーにも見えませんがね。本というのは読む人のためにあるものです。理解もできない誰かさんが自分を利口に見せるための道具じゃないんです。あなたが読んでいる本より私の読んでいる本の方が上だとかいう話じゃありません。どちらも人を感動させうる可能性をも持った本なのです。


様々な思惑、欲望、怒り、妄執が絡み合い暴力の連鎖は臨界点に達する。そして衝撃のラストに響く銃声。Billyは、そしてRomeはどこへ行くのか…。

続きは第3作『The Baddest Ass』へ!
そして第4作『Holy Death』も間もなく刊行!


と、何とかまとまったのかまとまってないのか…。架空の東映セントラル版キャストで終わってもよかったのだけど、なんか前置きで書いたものが完成できなかったのとか、この本当に素晴らしい作品が翻訳される機会があったとしてもどんな扱いを受けるかなど考えてモヤモヤしながら延々と書いてまた1週遅れてしまいました。
ずいぶん長々と書いてみたのだけど、結局はそれほど目新しい事ではなく当たり前の事だったりします。でも時にはこうやって頭から当たり前のことを書いて整理してみないと、「暴力しかない」バッサリ!でまともなことを書いてると思ってるような浅墓な輩が横行するばかりなのではないでしょうか。色々と書いてきましたが、やはりこんなところで長くなり過ぎているのを気にしつつで、少しはしょったり断定的にまとめたりで、自分の考えが本当に伝わったのかあまり自信はありません。結局のところはやっぱり細かいところについては色々な作品について語る中でちょこまか言ってくのが正しいのかなと思ったり。あと、今回はこの『Hogdoggin'』のようなシリアスな暴力を扱った作品を考えて書いたもので、バイオレンスホラーや暴力をテーマにしたエンターテインメント志向の強い作品についてはもう少し補足して語る必要があるかなとも思っています。ちなみに、ずいぶん遅ればせながらですが、バイオレンス・エンターテインメント小説/コミックの奇才、いや天才ドゥエイン・スゥイアジンスキーについては、なんとか1か月ぐらいのうちに再登場の予定ですので、その辺であまりやり過ぎない程度にじっくり書くつもりです。
あと、別に言い訳とかの類いじゃないのだけど、スペンサー・シリーズについてはただちにゴミ箱に捨てるほどは嫌っていなくてちゃんと読んだものは持っています。だって数少ないちゃんと翻訳が出るハードボイルドだもの。ただそれを信奉することあるごとにホークがスーさんがハマちゃんがとか言い出す人たちが日本のハードボイルドについての言説を停滞させているばかりの現状に我慢がならないだけです。あと、少し前の話だけど『このミス』の過去を振り返ってトンプソンの『ポップ1280』を1位にしたのはまずかったネ、などと苦笑してた奴はもうミステリや本について語る資格はないです。(作品批判じゃないぐらいわかってるさ)長い目で見ればその考えや苦笑いが、翻訳の文字を取ったぐらいの範囲のミステリの土壌を痩せさせるだけなんじゃない?

そもそも自分がこんなことをやっている理由は自分の好きな小説やコミックをもっとたくさんの人に読んでもらいたいということで、そのためにまず必要と思うのはなるべく正確な情報や、自分の思う読むべきポイントというようなもので、そこに自分の考えなんかも乗っけて行けるといいなという感じでやっているわけなのですが、時にあまりに素晴らしすぎる本を読んでしまうとその自分の考えというやつが暴れ出し、遂には今回のような暴動に至ってしまったわけです。今回はもうここまで来たらとことんまでやってしまえと無茶苦茶やってしまったのですが、ここまでやってしまうとさすがにいつものような読む気がある人だけ読めばいいんだい!というような逃げ文句も怖くて言えません。
とにかく上に書いた基本理念は変わっておりませんのでまたその方向で次回からはその方向で立て直しを図って行きます。ちょっと食あたりが出たぐらいでこの屋台をつぶすもんか!また来るからな!んー…でも一から出直しかも…。
とりあえず次回こそは『Hellblazer』の第2回を。モノがモノだけにちょっと遅れるかもしれないけど…。アレとアレについては絶対書かなければならんと思ってるし、またここで頑張って日本一珍妙な味のラーメンを作り続けるんでいっ!なにー?ラー油じゃなくてタバスコが置いてあるのは店のポリシーなんだよっ!


あ…すみません、もう少し続きます。無茶苦茶やり過ぎてその他の関連情報をうまく入れられなくなってしまったので最後に少し。昨年6月に『Yellow Medicine』について書いて以降の事ですが、Anthony Neil Smith氏の著作としては今年1月に単発のノワール長編『Worm』を刊行。そしてBilly Lafitteシリーズ第4作『Holy Dead』が間もなく刊行というところです。以前Billy Lafitteはその第4作が最終作になるそうだ、と書きましたがそうなったのかはちょっとわかりません。少し前ホームページでSmith氏が小説というのは早く書くべきである、ということを書いていて、その中でBilly Lafitteを死刑執行人/マック・ボラン・シリーズみたいにたくさん書きたいとか言っていたのでまだ続くのかもしれません。ホントにそのくらいいっぱい書いてくれるといいなあ。
あと、パブリッシャーだったウェブジン"Plot with Guns"ですが、さすがに手が回らなくなってしまったのでそれまで運用を任せていたスタッフに譲り渡したそうです。元々は盟友ヴィクター・ギシュラーと一緒に始めたものだったそうです。
それから勝手に作った映画版キャストなどを載せてしまいましたが、この『Hogdoggin'』、実は現実に映画化の話が!…あったのですが残念ながら資金が集まらず破綻してしまったそうです…。以前その情報を見たような気がしてたのですが、見失って確認が取れなくなって『Yellow Medicine』の時には書かなかったのですが、その間に進行はしていたようですね。資金集めのために作られたトレイラーがあるので載せておきます。うーん、観たかったなあ。



Anthony Neil Smith ホームページ

Plots with Guns


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