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2016年4月23日土曜日

Southern Bastards 2 :Gridiron

『Southern Basters』TPB第2巻です!もう少し早く読むつもりだったのだけど、年始辺り今読んでも書けないからなあ、とか思って先延ばしにしているうちに少し遅れてしまった。今回も熱い物語が展開!
なお、第2巻ということで、1巻の最後はネタバレしてしまいますのでご注意を。

Southern Bastards 1 :Here Was a Manについてはこちら

孤立無援の死闘。
そして、Earl Tubbは、Coach Bossに敗れ、斃れる…。


【Southern Bastards 2 :Gridiron】

神父と保安官のみが立ち会うEarl Tubbの埋葬。
そこにCoach Bossが現れる。

Earl Tubbの死因は不明の事故とされ、Coach Bossが罪を問われることはなかった。
だが、保安官はBossに厳しい非難の目を向け、無言で立ち去る。
そして、Bossにも勝利の笑みが浮かぶことはない。

そして、Coach Bossこと、Euless Bossの過去が回想され、語られる…。

Euless Bossは町でも知られたルーザーで泥棒の父、Olis Bossに育てられる。
少年時代、学校では盗人の息子として蔑まれ、帰宅しても、時には父と二人で暮らすごみ溜めのようなトレーラーハウスからも締め出され、屋外で眠る。
そんな彼の唯一の希望、生き甲斐はフットボールだった。

しかし、Eulessは決してフットボール選手としての才に恵まれているわけではなかった…。

フットボールにしがみつき、唯一人グラウンドに残りひたすら練習を続けるEuless。
そんな彼にコーチは、お前には才能が無い。あきらめろ。と、冷たく言い放つ。
上級生からは凄惨ないじめに遭う。
それでもしがみつき練習を続けるEuless。

そんな彼にある日、一人の男が声を掛ける…。
そして、Eulessにも光明が見えかけたかに思われたが…。


Coach Bossの過去、Euless BossはいかにしてCoach Bossとなったかが語られます。
Euless Bossは大変不幸な男であり、彼は一度たりとも心から笑顔を浮かべられるような勝利を手にしたことはありません。彼のフットボールに対する気持ちは、愛情というよりは妄執と言うべきもの。彼は何があろうと退くことはできない。そうなれば自分の全てが崩壊してしまうから。そして、彼の勝利には必ず代償が付きまとい、Earl Tubbを退けた彼は、また大きな物を失います。



今回もJason Latourの画が本当に素晴らしい。ともすれば「この人物は不幸な生い立ちのためにこうなってしまったが、心の底からの悪人ではない」というようなエクスキューズに陥りかねないストーリーを、そのシンプルに削り取った力強い線、アクション、押しつぶしたような表情からにじみ出るような感情で、Coach Bossという人物を正確に、力強く彫り上げて行くことで、そのような曖昧さ、甘さの入る余地のない作品として完成させています。Coach Bossの生い立ちや不運には同情できる、しかし、だからと言って彼の選択は許されるものだったのか、そして、彼はもはや何があろうと退くことのできない人物なのだ、ということが読む者にあまりにも力強くストレートに伝わります。
もちろんJason Aaronのストーリーが素晴らしいことは言うまでもない。しかしそれもこのJason Latourという素晴らしいアーティストとの共同作業によって初めて完成されるもの。そしてそういう優れたアーティストと巡り合い作品を作れるというのもJason Aaronという作家の実力なのでしょう。自分としてはこれは、あの名作『100 Bullets』にも匹敵する奇跡なのではないか、と思いはじめています。

Earl Tubbは斃れた。しかし、まだこのストーリーが終わるわけではない。Coach Bossの言葉の中に、彼の敵、更なるCraw Countyの闇がほのめかされる。そして、保安官であったTubbの父に何があったのか?彼はなぜ町の住民に憎しみのような感情を持たれているのか?そして、最後に1巻のラストに登場した人物が告げます。"I'm going home."新たな人物の登場により、この先もまたさらに大きな物語が、熱く展開して行くことになるのでしょう。『Southern Bastards 3 :Homecoming』は6月発売。あともう少し!でもまたその次はしばらく先になるのでしょうね。しかし、このくらい思い入れのある作品ならいくらでも待つのだ!Aaronの『Scalped』も早く読まなきゃなんないしね。

1巻のとき、この作品のTVシリーズ化が決定進行中であることをお知らせしましたが、その後の続報はまだ今のところないようです。そして今週、この作品のアイズナー賞Best Continuing Series部門へのノミネートが発表されました。同時にライターJason AaronのBest Writer部門へのノミネートも発表されています。Jason Aaronは昨年秋より同Image Comicsより新シリーズ、『Scalped』のR. M. Gueraとの『The Goddamned』も始まっています。いや、もちろん読むに決まってるよ。


Southern Bastards 公式ホームページ

●関連記事

Southern Bastards 1 :Here Was a Man


●Southern Bastards


●Scalped



●The Goddamned


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2016年4月16日土曜日

Paul D. Brazill/Guns Of Brixton

今回は、前回まで長々とやってきました英国犯罪小説アンソロジー『True Brit Grit』の編者でもあり、イギリスの現在のこのシーンのオーガナイザー的立場でもある作家Paul D. Brazillの、とりあえず現在のところの代表作である『Guns Of Brixton』であります。


なんてこった。Big JimがHalf-Pint Harryの頭を吹っ飛ばしちまった。ボスのTony Cookのために、スーツケースを受け取って来るだけの仕事だったのに。うっかりショットガンが暴発しちまったんだ。こうなっちまったものはしょうがない。次の仕事が待ってる。Harryの死体は途中でAnarchy Alの所に寄って始末を頼むとしよう。KennyはBig Jimと死体をジャガーのトランクに積み込み、用意してきたドレスに着替えはじめる…。

新年最初の朝、まだ昨夜の年越しパーティーの二日酔いもさめぬまま、勤め先の宝石店に出勤してきたLynne。昨日のパーティーはどうだった?とゲイのゴージャス・ジョージに問いかけながら、鼻からコカインを吸い込む。その時、窓から駐車場にジャガーが滑り込んでくるのが見える。車から降りてきたのはやけにがっしりした体格の女2人。あれはロシア人だわ。派手に金を使うに決まっている。早く店を開けなきゃ。

Big JimとKennyは宝石店での収穫に満足しながら、ジャガーを疾らせる。ブリクストン・ヒル・ロードからコールドハーバー・レーンへ。かつらを取り、化粧をぬぐい、祝杯を上げながら…。

Richardは妻Camillaに言いつけられ、気の進まないパーティーの買い物に車を走らせる。気分を盛り上げる曲を探し、助手席のCDに気を取られ、目を戻すと、おい!ここは一方通行だぞ!前方からは逆走してきたジャガーが突っ込んでくる…。


という感じで、他にも殺し屋神父、引退したタフな老ギャング、事件そっちのけで目に入った女性に片っ端から欲情する刑事などなど、イカレた奴らが次々と登場し、ロンドンを走り回りぶつかり合う。果たして生き残るのは誰か?そしてボスTonyが求めるスーツケースの中身は?

ガイ・リッチー初期の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』あたりに近い感じと言えば分りやすいかと。ガイ・リッチーの映像的遊びなどの部分を除いても、タランティーノ『レザボア・ドッグス』とかとどこか違うテイストがブリティッシュ・ノワール。あの感じが好きな人にはおススメ。嫌いな人については果てしなくどーでもいいです。
長さとしては134ページで中編というよりは短めの長編という感じでした。当地の流行や風俗に言及されるところも結構あったのですが、ちょっとその辺はあまりわからなかったり。地方出身者についてそれぞれの地方で違う呼称があったりするのは面白かった。あまり言ってはいけないよび方なのだろうけど。
最後の落ちについては、サッカーはおろかスポーツ全般に疎い私は少し調べてやっとわかったのだけど、一般常識なのかな?

版元は現在英国犯罪小説方面で注目のCaffeine Nights Publishingなのですが、こちらも元は『True Brit Grit』で再三登場のByker BooksのBest of British Crimeの一冊でした。無くなってしまったのは本当に残念なのですが、大体の作品はこのCaffeine Nights PublishingやNear To The Knuckleで新たに出版されているようです。

作者Paul D. Brazillについては、とりあえずあんだけ頑張ったので、『True Brit Grit』のときかいたのをコピー。

いくつかのアンソロジーの編者である他、作家としても活躍中で、代表作は『Guns Of Brixton』。また近年は自らパブリッシャーBlackwitch Pressを立ち上げ、第1回で紹介したチャリティー・アンソロジー『Exiles』もそちらから出版されています。他にも彼の企画で同キャラクターを複数の作家が書いている狼男探偵Roman Daltonシリーズも注目。現在はイギリスを出てポーランド在住で、ホームページではポーランドのノワールPolski Noirの企画も準備中です。現在のイギリスのこのシーンの中心人物の一人でしょう。

ということなのですが、時間がかかり過ぎてその後変化もあったので補足訂正を。まず、自らのパブリッシャーであるBlackwitch Pressについては、現在閉鎖中のようでホームページからは消えています。Amazonでは販売は続いているので完全にやめてしまったようではないのですが。どうも、その後も活動が拡がり、多忙というのが原因と思われます。
そして、最後に書いたPolski Noirについては本格的に始動を開始したようで、ホームページ内のリンクから進めるようになっています。ただし、ポーランド語のようで読むことはできないのですが…。また、スロベニアで翻訳された作品も出され、そちらの作家の作品も紹介されていたりと、かなりグローバルに活動を広げているようなので、Poliski NoirについてもいずれはPaul氏の編集による英訳されたアンソロジーなどが出されるのではないかと期待しています。
イギリス方面については、昨年秋から、米Out of the Gutter内にBrit Grit Alleyを設け、イギリス作家のインタビューやニュースなどを発信しています。
自作の方では、現在2冊が準備中。まず、おなじみAll Due Respect Booksから短篇集『The Last Laugh』。そしてCaffeine Nights Publishingから『Cold London Blues』。こちらはどうも今回の『Guns Of Brixton』のキャラクター達が再登場する模様で楽しみな作品です。
ということで、作家としても各方面のオーガナイザーとしても、今後ますますの活躍が期待されるPaul D. Brazill。イギリス、そしてポーランドなどの現在のノワール状況を知りたければPaul D. Brazillから目を離すな!


Paul D. Brazillホームページ

Caffeine Nights Publishing

Out of the Gutter


●関連記事

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第3回

●狼男探偵Roman Daltonシリーズ


●Paul D. Brazill


●Paul D. Brazill編集のアンソロジー


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2016年4月10日日曜日

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第5回

イギリスの最新の犯罪小説作家45人を集めた注目のアンソロジー『True Brit Grit』、様々な事情(主に体力を始めとする私自身の力不足…)で全5回ながら延々と引っ張ってきましたが、遂にというかやっとで最終回であります。


■A Day in the Death of Stafford Plank/Stuart Ayris

誰でも殺しについて真剣に考えたときはあるだろう。さあ、否定してみたまえ。だが、誰の中にも殺人者は潜んでいるのだ。そして、この私、Stafford Plankが殺人者となる日がやってきた。
いつものように、殺人への期待、血まみれの部屋を想像しながら目覚める。だが、今日も何一つ起こった気配はない。だが、そんな私の目の前に天使が降りてくる。”あなたは選ばれました、Stafford Plank。さあ、世界を救うのです。”
殺人に取りつかれた、狂った男の内面が、現実と幻覚の区別もつかないまま語られ続ける。作者Stuart Ayrisは1969年ロンドン東部ダゲナム生まれの作家。結構面白い作品だなと思いつつこういうのだと長編でどういうのを書くのかわかりにくいかな、と思っていたらちょっとそちらの方も謎。代表作はFrugality3部作というのがあるのだけど、どうも幻想的なミステリーのようだけど内容は今一つわかりません。うむむ、気になるけど守備範囲外のようでなかなか手が回らないかも…。

Stuart Ayrisホームページ




■The Plebitarian/Danny Hogan

ホームセンターB&Qは私が一番好きな場所だ。そしてこの私は素晴らしい町で素晴らしい家族に囲まれて暮らしている。教会に属する人々は信心深い素晴らしい人ばかりだ。だが、この町にも汚染は広がり始めている。私の愛するB&Qへ向かうにはその腐った奴らだらけの町を通って行かなければならない。まずは、最近隣に越してきたポーランド人の金の亡者Tim…。
また続いて狂った人物の内面を一人称で、という作品なのですが、主人公自体にはユーモアのかけらもなく陰惨な話なのだけど、あまりにも自己中心的だったりホームセンターに固執したりとかなり滑稽でブラックユーモア的な作品ではないかと思います。コミックでやってみたら相当強烈なブラックユーモアになると思う。郊外の町が衰退し、治安が悪化し、外国人が増えて、というのはこのアンソロジーの作品の中にもしばしば出てくるテーマ。今のイギリスの社会問題の一つなのでしょうね。Danny Hoganはロンドン東部の生まれでブライトン在住の作家。ちょっと活動が中断しているようにも見えるのだけど、3冊の著書はカバーとか結構私の好みで早く読んでみたい感じです。影響を受けた作家の中にガース・エニスの名前があったり。

Danny Hoganホームページ




■King Edward/Gerard Brennan

ところであの葉巻はどこへ行ったんだ?キング・エドワード。Vintoの結婚式で配られたやつだ。そして、そのVintoが、今俺の頭に38口径リボルバーの銃口を押し付けている…。
シンプルなワンシーンのストーリーなのだけど、葉巻というアイテムに色々な意味を持たせ、屈折点にするあたりが上手い。Gerard BrennanはBlasted HeathからThe Pointシリーズなどの作品を出しているアイルランドの作家です。多くのアンソロジーにも作品を発表し、イギリスのこのシーンでも注目されている作家のひとりでしょう。あのAkashicの都市ノワールシリーズの一冊Belfast Noirにも作品が掲載されています。

Gerard Brennanホームページ




■This is Glasgow/Steven Miscandlon

俺は奴の頭にかぶせていたバッグを取り、椅子に縛り付ける。だがこれはタランティーノ映画じゃない。頭のサイズのキャンバスバッグなんてものはなくて、角の店で買い物したときのブルーのポリ袋だ。そして俺はギャングなんかじゃない。そしてここはグラスゴーだ。野郎は駅のエスカレーターで俺の可愛い弟を突き飛ばしにやけて歩き去ったクズだ。俺にこんなことしてただで済むと思ってるのか!俺が誰だと思ってるんだ!貴様が誰だろうと関係ねえ。ここがグラスゴーだってことを分からせてやるまでだ!
作者Steven Miscandlonは90年代初めに19歳で小説を書きはじめ、94年に最初の短篇集を自費出版したちょっと天才肌なのか、検索してみたら堅いビジネス系のライターなどの商売で成功してしまっているようで、今はあまり小説は書いていない様子。その後の作品を集めた短篇集が1冊見つかっただけでした。それでも一方では、この後登場の英国女流犯罪小説期待の星Julie MorriganのMorrigan Publishingでブックデザイン、編集などを手掛けていたりと、まだこのシーンにも関わってはいるようです。このアンソロジーの中でも結構気に入ってたりする作品なので、また小説の方にも力を入れてもらいたいものだと思うのだけど。ビジネス用のを載せても仕方ないんで、ブックデザイン用のホームページのリンクを載せときました。

Steven Miscandlonホームページ




■Brit Grit/Charlie Wade

Rickの左手にはLOVEの刺青、そして指の一本無くなった右手にはHAT。「HATをBATに変えることもできるけど」刺青師は言う。「ばかばかしい、こうなっちまったらもう消すしかないだろう」とRick。「しかし何でこんなことになっちまったんだい?」そしてその顛末をRickは語り始めた…。
お分かりとは思うけど、元の刺青はLOVEとHATE。元ネタは映画『狩人の夜』でロバート・ミッチャムが入れてた有名なやつですね。ちょっとした犯罪小噺という感じの作品。こんな雰囲気のを誰かの短篇集で読んだな、と思ったんだけど思い出せませんでした。Charlie Wadeはダービシャー在住の作家。3作の著作の中ではスパイ物コメディの『The Spy With Eczema』あたりから読んでみたい感じです。

Charlie Wadeホームページ




■Five Bag Of Billy/Charlie Williams

Sparrowがバスルームから戻ると、Gavはまだ斧を研いでいた。冗談が通じる雰囲気じゃない。「奴はブツをちょろまかしてやがる。」Gavはそう主張する。直感だと。なんとかここは頭脳役である俺が穏便におさめなければ。「とにかくまず、奴の話を聞こう。俺が話す。いいな。」SparrowはGavを説得する。だが、Billyが部屋に入ってきた途端に、Gavはその頭に斧を叩きつけた…。
自分では利口でうまく立ち回っていると思っていた男が…、という話。それほどひねりのある話ではないのだけど、キャラが立っていて読ませる作品です。Charlie Williamsはウスター在住の作家。Charlie Williamsなんてあまりにもよくある名前で、検索してやっと見つけてみたら、代表作のMangleシリーズって少し前に気になって2冊ほど買っといたやつだと気が付いた。もしかしたらよくある名前で損しているのでは?ナイトクラブのドアマンRoyston Blakeが主人公というこのシリーズ、なるべく早く読んで報告いたします。ホームページは現在はないもよう。リストは短篇集と、Mangleシリーズの最初の3冊を。




■It Could Be You/Julie Morrigan

「金をよこせ。」Beggsyは跪かされ、首の後ろに銃口を突きつけられている。なんてこった。しかし、さっきまで自分のモノを咥えていた横で冷たくなって頭から血を流している女よりはましだ。アイルランド人はさらに言う。「お前が大金を手に入れたのは分かってるんだ。さっさと出せ。」
Beggsyは何故大金を手に入れ、何故それを狙われるのか。チープな犯罪が迎えるチープな結末。ちょっと先に名前が出てしまったけど、こちらがイギリス犯罪小説界期待の新女王、Julie Morriganの作品です。「女流」とは書いたけれど、アクの強いキャラクターとダーティーな言葉が飛び交うかなり強面の作風。現在2作目まで刊行中のCutterトリロジーの第1作『Cutter's Deal』は元々は何回も登場しているByker BooksのBest of British Crimeの1冊として出されたものです。作品を出している自分のMorrigan Publishingからは他の作家の刊行もあり、個人出版ながらも結構攻めに出ている様子。今後の活躍に要注目の作家です。

Julie Morriganホームページ




■No Shortcut/Howard Linskey

俺は屋上の縁に立っている。後ろ手に縛られ動くこともできない。一押しされれば200フィート下の固いコンクリートまで一直線だ。そして隣には同じ状態の4人の仲間が並ぶ。なんでこんなことになっちまったんだろう。「近道なんてないんだぞ。」親父がいつも繰り返していた言葉が俺の頭の中によみがえる…。
調子に乗ってやらかした犯罪が、結局は本職の怖い筋に発覚し、という話。教訓的な話というよりは、ドライでニヒリスティックなノワールなのでご安心を。Howard Linskeyはダーハム出身で現在はハートフォードシャー在住の作家。様々な職を転々としながら2011年デビュー長編『The Drop』を発表。こちらはテレビドラマ化もされたようですね。続くDavid Blakeシリーズ2作の後、ペンギンランダムハウスとの契約を果たし、ベストセラー作家への道を邁進中というところでしょうか。ホームページ(2014年より放置中)はそういう作家らしくなくなんかほのぼのしてて笑えます。タンポポ?

Howard Linskeyホームページ




■The Great Pretender/Ray Banks

俺たちは叩きのめされ、路上に横たわる。ああ、俺には自分が何をやったかわかってる。頭がずいぶんと朦朧としてきたが忘れちゃいない。それは先週の事だ…。
きちんとしたスーツでめかしこんで、俺たちは奴の経営する葬儀屋で奴と面会を取り付ける。行儀のよい笑顔を浮かべて俺たちを迎え入れる奴。だが俺には分かっている。奴も俺たちと同じ成りすましのイカサマ野郎だってことが…。
トリを務めるのは真打登場というところ。イギリス犯罪小説界の次代を担うRay Banksであります。これにはやられた。話が進むにつれて全体が見えてきて、最後は泣ける。私はこういう話に弱いのですよ。カーコディー、ファイフ出身の作家Ray Banks。代表作はBlasted HeathからのCal innes4部作。イギリスのみならず、このジャンルでは最も注目されている作家のひとりです。Akashic都市ノワールシリーズのケン・ブルーウン編集の『Dublin Noir』にも作品が収録されています。ホームページは映画の事ばかりだけど更新多し。

Ray Banksホームページ




うー、やっと終わった…。特になーんにも考えていない私なので、思っていたよりも大変な作業であったなどと長い道のりを振り返ってみることもないのだけど、やっぱり物理的にも時間的にも結構大変だったなと、長い道のりを振り返ってみると案外記憶も既に朧だったりするのに気付いたりするのでした。まあ、なんとかやり遂げたっス。
実はこのアンソロジー2012年発行で、最新というには少し前だったりもするのだけど、この辺に関してはそれ以前からも誰も紹介してくれないジャンルなので、あえて最新を強調させてもらいました。さすがに総勢45人ともなると中には正体不明なんて言うのもあったけど、自分としてはほとんどの作品はそれなりに楽しめる良作だったと思います。色々な作品の中で時折気付いたのは、あの今は亡き英国犯罪小説の巨匠テッド・ルイスからの強い影響。日本では『ゲット・カーター(殺しのフーガ)』1冊しか翻訳は無いのだけど、このシーンの盛り上がりとともに再評価の機運も高まり、原書Kindleなどでは手に入りやすくもなっているので、この人についてももっと読んでいきたいものだと思っています。
とりあえずは、稚拙ながらもちょっとした現代英国犯罪小説家ガイド的なものにはなったんではないかと思いますので、またこれを基にしてそれぞれの作家についても深く探って行きたいと思っております。次回はこれの完成を個人的に勝手に記念しまして、編者のひとりであるPaul D. Brazillの『Guns Of Brixton』について語ってみようと思っています。

●True Brit Grit全収録作
1. Two Fingers of Noir by Alan Griffiths
2. Eat Shit by Tony Black
3. Baby Face And Irn Bru by Allan Guthrie
4. Pretty Hot T’Ing by Adrian Magson
5. Black Betty by Sheila Quigley
6. Payback: With Interest by Matt Hilton
7. Looking for Jamie by Iain Rowan
8. Stones in Me Pocket by Nigel Bird
9. The Catch and The Fall by Luke Block
10. A Long Time Coming by Paul Grzegorzek
11. Loose Ends by Gary Dobbs
12. Graduation Day by Malcolm Holt
13. Cry Baby by Victoria Watson
14. The Savage World of Men by Richard Godwin
15. Hard Boiled Poem (a mystery) by Alan Savage
16. A Dirty Job by Sue Harding
17. Stay Free by Nick Quantrill
18. The Best Days of My Life by Steven Porter
19. Hanging Stanley by Jason Michel
20. The Wrong Place to Die by Nick Triplow
21. Coffin Boy by Nick Mott
22. Meat Is Murder by Colin Graham
23. Adult Education by Graham Smith
24. A Public Service by Col Bury
25. Hero by Pete Sortwell
26. Snapshots by Paul D Brazill
27. Smoked by Luca Veste
28. Geraldine by Andy Rivers
29. A Minimum of Reason by Nick Boldock
30. Dope on a Rope by Darren Sant
31. A Speck of Dust by David Barber
32. Hard Times by Ian Ayris
33. Never Ending by McDroll
34. Imagining by Ben Cheetham
35. Escalator by Jim Hilton
36. Faces by Frank Duffy
37. A Day In The Death Of Stafford Plank by Stuart Ayris
38. The Plebitarian by Danny Hogan
39. King Edward by Gerard Brennan
40. This Is Glasgow by Steven Miscandlon
41. Brit Grit by Charlie Wade
42. Five Bags Of Billy by Charlie Williams
43. It Could Be You by Julie Morrigan
44. No Shortcuts by Howard Linskey
45. The Great Pretender by Ray Banks



●関連記事

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第1回

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第2回

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第3回

True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第4回


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2016年4月2日土曜日

2000AD 2015年春期 [Prog 1924-1936]

いくらなんでもそろそろなんとかしなくては、ということでずいぶん遅れている2000ADの続き、昨年2015年の春期です。まず、今期のラインナップは以下の通り。

 Judge Dredd
 Slaine [Prog 1924-1936]
 Grey Area [Prog 1925-1931]
 Orlok, Agent of East-Mega One [Prog 1924-1929]
 Strontium Dog [Prog 1924-1933]

ご覧の通り、今期は『Slaine』のみがProg 1936まで続き、他の先品は早めに終わっており、その後には3話構成の「Tharg's 3rillers」や1話完結の「Tharg's Future Shocks」が収録されるという形になっていました。実際にはProg 1934からは夏期の連載が始まっており、『Judge Dredd』もそこが区切りとなっているので、今期はProg 1933までのものについてまで書いています。
そして今期のトップ画像は、John Wagner/Carlos Ezquerraの巨匠コンビによる、宇宙冒険活劇へと復帰した『Strontium Dog』であります!


Judge Dredd
 1. Enceladus - New Life : Rob Williams/Henry Flint (Part1-5)
 2. Breaking Bud : John Wagner/Richard Elson (Part1-5)

1は2014年冬期の同コンビによる個人的には2014年のDredd最高傑作「Titan」の続編です。犯罪を犯したジャッジの流刑地であるTitanで、秘かに反乱を起こした囚人たちによる罠で、ドレッドが絶体絶命のピンチに陥るというストーリー。最終的には元女性ジャッジNixonをリーダーとする囚人たちが宇宙船を奪い、土星の衛星であるEnceladusに逃亡して終わります。
今回のストーリーは、そのEnceladusから謎の宇宙船がMega-City Oneへ向かって接近するところから始まります。以前の事件の後、ドレッドには告げられないまま、Enceladusには核ミサイルが撃ち込まれ、生存者はいないはず。呼びかけに全く応答しない宇宙船はCityの外で撃墜される。残骸の調査では船内には人間がいた形跡すらなく、ただEnceladusの氷のみが発見される。ドレッドは船内に記録映像を見つける。それはNixonによるEnceladusに逃亡した後の経緯だった。極寒の衛星Enceladusに着陸した囚人たちはその過酷な環境にたちまち危機に陥る。食料も尽き、グループは絶滅に瀕する。Nixonは独り放棄された基地へ探索に向かい、異様な生命体と遭遇する…。
今回もHenry Flintの作画が素晴らしい。実は今期の全5話は前編で、続く夏期に後編であるOld Lifeが続き、Mega-City Oneに恐るべき脅威が訪れます。

2も以前の2000ADもしくは、Judge Dedd Megazineに掲載された話から続くエピソードのようなのですが、こちらについては元が今のところ分かりません。Justice Departmentの兵器研究所で研究されている、着装した人間の姿を不可視にして力を増大させるというブレスレットを巡る話で、実はこれはその以前のエピソードで何らかの方法で更に未来の世界から持ち込まれたものであるようです。今回の話では、研究のためにそのブレスレットを装着する被験者となっていたBudという男がリストラされ、生活苦とリストラされた恨みから、盗み出したそれを使い事件を起こすというもの。そこに更に未来から回収のために現れた時間警察が絡んできます。
タイトルの「Breaking Bud」は、明らかにあのアメリカのTVドラマ『Breaking Bad』のもじりですね。生活苦に追いつめられた男の犯罪というところが共通しているけど、多分John Wagnerもあの作品が気に入っているのでしょうね。
作画のRichard Elsonは見た事がある画だと思っていたのだけど最近のDreddではないようです。どちらかというと地味な印象ですが、堅実にわかりやすくストーリーを伝える画。最近のWagnerによるエピソードでよく起用されるタイプの画で、Colin Macnelあたりに近い印象だと思います。

Slaine/The Brutania Chronicle : Book Two Primordial
 Pat Mills/Simon Davis

2014年春期に掲載された「Book One A Simple Killing」に続くThe Brutania Chronicleの第2章です。昨年に書いたときと比べ、よくわかったなどとはまだ到底言えないのだけど、少しわかってきたことをまず修正がてら書いておきます。まずはこの作品は思っていたような古代戦士の冒険譚というよりは、かなり複雑なオリジナルの神話的世界を舞台としているらしいこと。前回、作品中でGoddessと書かれていたのを雰囲気から神と書いてしまったのですが、もう少し複雑なものらしい。Slainは基本的にはそのGoddessに仕えているようなのだけど、一方で憎悪の対象でもある様だったり。でも単純に王様的ななものとも違ってどちらかと言えば神的なものという感じのようなのですが。ストーリーの中には登場せず、様々に言及されるだけだったりするのもわかりにくいところなのですが。今回も更に過去の出来事に関する言及が増え、わからない情報が膨らむばかりだったりするのですが、わかる部分でのストーリー展開とSimon Davisの素晴らしいアートでなんとかしがみついて読んでいた感じです。とりあえず今回もなんとかあらすじの解説を試みてみます。
前回はカルト教団と書いていたのだけど、神話世界で魔法的なものも普通のようでちょっとその解釈も間違っていたと思います。さて、今回のストーリーはThe Brutania Chronicleの最大の敵であるLord Wierdの領土内の本拠地の砦Gulnasadhに乗り込んだが力尽き、Slaineが捕獲されたところから始まります。かつて父をSlainに殺されたLord Wierdは自らの手で決着を付けようと彼に闘いを挑む。Goddessの力も及ばないところで絶対のピンチに陥るSlainだったが、かろうじてLord Wierdを下し、虜囚となっていた娘Sineadを連れ、Gulnasadhを脱出する。鍛えられた追手の軍団と森で死闘を繰り広げるうち、洗脳されていたSineadも正気を取り戻す。だが、彼らの前に立ちふさがる軍団の隊長こそがこの旅の途中で別れた共にGoddessに仕える親友Gortiだった…。
今回、森で多勢に追いつめられたSlainは、隠された奥の手的な能力Warpでクリーチャー的な狂戦士となって戦います。それが右の画像。スーパーサイヤ人というよりは大猿的なもののようです。ちょっとわかりにくいかと思ったのでWarpと書いてみたけど、文脈的には「歪む」という感じなので以降はその書き方で行きます。しかしそんな能力を隠していたとは。まだまだ知らないことが出てきそう。今回ラストは、Lord Wierdにより歪み能力を与えられたGortiがSlainに襲い掛かり、死闘の決着は如何に?というところでBook Threeへとつづく。
今回もSimon Davisの画が圧巻。とにかく多少は内容が把握できなくても画だけでも見る価値あり。ご覧のようなイラスト、絵画の域の画なのだけど、バトルシーンでも動きも迫力もあり素晴らしい。巨匠Pat Millsについては、冬期に騒いでいた通り、『ABC Warriors』『Savage』などを含むMills未来史に取り掛かり、手始めに『Invasion』を読み始めているところなのですが、このもう一つの代表作『Slaine』についても最初から少しは読み始め、いくらかでも早く設定ぐらいは把握しなければいかんなと思っております。

Grey Area/Locked In/Talk Down
 Dan Abnett/Mark Harrison

2014年春期に、敵宇宙船を爆破したが主人公Bullet達チームの生死は不明、というエンディングで、しばらくの再開はないかと思っていた『Grey Area』が思いのほか早く復帰。と言っても1年経っているのか。
Bullet達が倒したエイリアンは、実は複数の別次元に拡がって存在する生命体で、その一つの宇宙船を破壊したことにより、Bullet達の宇宙艇は別次元の宇宙に飛ばされてしまう。手近の惑星に着陸したBullet達はその星のGrey Areaに収容される。そして、その惑星にもその宇宙の同エイリアンの脅威が迫ってくる。だが、テレパシーによる共感を発達させた平和主義のその星の住人はその脅威に何ら手を打たず、Bulletの話にも耳を傾けようとしないのだった…。
地球ではGrey Areaを管理する立場だったBullet達が逆の立場になってしまうという展開です。今期のストーリーでは、まだ異星のGrey Areaで、襲ってくるエイリアンへの対策も立てられず、元の次元に帰るめども立たずという状態で終わりますが、『Grey Area』は次の夏期にProg 1945から再開。夏期の最後になるのか秋期のラインナップに続くのかまだ不明です。
今回も引き続き作画はMark Harrison。異世界の空気感などを描かせると本当に上手い。線もカラーも素晴らしいけど、相変わらず女性に関しては少しブサイク…。

Oarok, Agent of East-Meg One/The Rasputin Caper
 Arthur Wyatt/Jake Lynch

今期はカバー画像なし。前回2015年冬期から始まったMega-City Oneと敵対する東側East-Meg Oneの工作員を主人公とするシリーズが、今期も登場。前回書いたようにEast-Meg One消滅前の30年ほど前の時代が舞台となります。前回East-Meg Oneから離脱逃亡した工作員Oarokだったが、実はそれは自国内の裏切り者をあぶりだすための偽装で、今回は元のスパイとして復帰。
Oarokの今回の任務は、西側に亡命している予知能力を持った画家Jiri Rasputinを東側に取り戻すこと。しかし、同時にRasputinの身を狙うEast-Meg Twoの凄腕工作員Black Widowerやミュータントギャングなどが現れ、三つ巴の乱戦へと展開して行く。果たして誰がRasputinを手中に収めるのか?
今回も作画はレトロ風タッチモノクロのJaku Lynch。基本的には全ページカラーの2000ADでしばしばみられる白黒の作品は、イギリス作家に特に顕著な線へのこだわりだと思うのですが、その辺についてはイギリスのライターが起用され、アーティストもイギリスからの登用が多い『Hellblazer』を読んでて少し気付いた事だったりするので、詳しい考察はいずれそちらの方で。たぶんガース・エニス編になってからになると思うけど。本格的に軌道に乗り出した感じのこのシリーズも、多分今年のいずれかの時点で再登場になると思われます。

Strontium Dog/The Stix Fix
 John Wagner/Carlos Ezaquerra

2014年冬期以来の登場。前シーズンラストではStrontium DogことJohnny Alphaの決死の行動によりミュータント戦争は終結を迎えたが、彼の生死は不明、というところで終わっていたわけですが、もちろんStrontium Dogは生きていたのだ!
あの大爆発の中死亡したと思われていたJohnny Alpha。だが、彼は救出され、秘密裏に厳重な警戒の許政府施設内に収監されていた。ある日、彼の許を一人の軍関係者が訪れ、あるミッションを依頼する。戦争の後、彼同様に密かに収監されていた仲間の命と引き換えに。航行中の宇宙旅客機が何者かに襲撃され、乗員乗客は全て殺害される。だがその中でただ一人遺体の見つかっていない乗客がいた。Jim Jing Jong。NKDの首席。行方不明の彼に代わり国家の実権を握る甥のJim Jong Jingはこれを陰謀による誘拐と糾弾し、報復に核攻撃を仕掛けると脅迫を仕掛けている。早急にJim Jing Jongを見つけ出さねばならない。Johnnyは拘束されている仲間たちの解放を条件にこのミッションを引き受けるのだが…。
NKDのモデルは明らかに北の某国。同行してきた厄介な将軍に妨害されながら、Johnnyはこの犯行がStix族(全員同じEzaquerra面!)によるものと見抜くのだった。
ベテラン巨匠コンビによる代表作。今期から宇宙の賞金稼ぎstrontium DogのSF宇宙冒険譚に復帰というところでしょう。今回も私の敬愛する(2014年秋期Judge Dredd参照)Ezaquerra師匠の作画が味わい深い!これはこの画でこそ表現できる世界…あ、Mark HarrisonのStrontium Dogもいいかも…いやいや、これはEzaquerra師匠にしか描けない世界なのである!巨匠コンビによる息もピッタリで、Wagner老もEzaquerra師匠の画ならではの笑いがとれるポイントも確実に把握している。ちなみに今回の画像はいずれも師匠のものに非ず。(見つかりませんでした。)師匠の画をまだ見たことが無いという人はただちにCarlos Ezaquerraで画像検索して、師匠のドス黒グロダーク愉快なEzaquerraワールドを堪能しよう。先月にはImage Comicsからも過去のDC作品で絶版中だった師匠プラスガース・エニスという豪華コンビによる作品『Bloody Mary』も発売されております。Strontium Dog次シーズンは今年冬期に登場!

そして今回は最後に、前回冬期最後に予告したI. N. J. Culbardの単独作品について。Prog 1933に掲載されたTharg's Future Shocksの『The World According to Bob』という読み切り作品。ストーリーも作画もI. N. J. Culbardによるものです。
過去を消すため様々な情報を書き換え、新たな自分の身分証明を作り上げたBob。しかし、ねつ造したはずの自分、Bob Dariusはなぜか有名人になっており、理由もわからない敵対勢力も現れ、たちまち身を隠さざるを得なくなる。そして街角で「歴史は書き換えられている!お前らは嘘の中に生きているのだ!」と叫ぶ男と出会い、自分の状況を打ち明ける。世界は常に書き換えられており、新たに加わった情報はただちにその世界の中に組み込まれ改変されてしまうのだ。と、男は語る。そのシステムはどこにあるのだ?と尋ねるBob。そして、Bobはビッグ・ベンの内部に侵入し、その機構を破壊する。果たして世界の書き換えはストップされたのだろうか?
というフィリップ・K・ディックあたりを思わせる作品です。4ページの作品の説明でこの長さになってしまったぐらいなので、少しわかりにくいところもあるけど、Culbardの魅力的な画とともに私は結構好きな作品です。単独でも英SelfMadeHero社からラブクラフトのコミカライズ作品を発表し、アメリカでの新作は昨年のDark HorseからDan Abnettとの共作『Dark Age』など活躍中のCulbard。注目の『Brass Sun』第4シーズンは2015年秋期。早く読まねば…。

というわけでずいぶんと遅れていました2000AD 2015年春期もなんとか終了です。歴史もそれなりにあり、以前からの続きなどで少しわかりにくいところも多い2000ADゆえに、いささかのガイドにでもなればと思い、始めて、量的にでもいくらか形になって来たかと思いつつも、こんなに遅れていては仕方ない。なんとか今年秋の通算2000号までには追い付くぞ、ぐらいの気持ちで頑張らねばと思っております。次回夏期には、あの『Stickleback』のコンビ、Ian Edginton/D'Israeliによる新シリーズが開始!そして『Jaegir』登場!などのラインナップ!えーと、なんとか来月ぐらいにはやるつもりです。


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